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東京高等裁判所 平成11年(ネ)3297号 判決 1999年12月15日

控訴人(被告) Y1

控訴人(被告) Y2

右両名訴訟代理人弁護士 斎藤勘造

被控訴人(原告) 株式会社エーエム・ピーエム・ジャパン

右代表者代表取締役 A

右訴訟代理人弁護士 吉沢寛

主文

一  本件控訴をいずれも棄却する。

二  控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求める裁判

一  控訴人ら

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人の請求をいずれも棄却する

3  訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文第一項同旨

第二事案の概要

次のとおり付け加えるほかは原判決「事実及び理由」中の「第二 事案の概要」ないし「第五 争点に関する当事者の主張」記載のとおりである(ただし、原判決書二七頁末行の「対等額」を「対当額」に改める。)から、これを引用する。

一  控訴人らの補充主張

1  平成六年八月以降の雑費、消耗品代の計上

被控訴人の利益となるチャージは売上高から売上原価を控除した売上総利益にチャージ率を乗じたもので、売上高の八パーセントを超える人件費を雑費に計上しても控訴人Y1 の債務を増加させ自己資本を減少させるだけで、被控訴人の利益を減少させる経理処理ではない。レンタカー代、携帯電話代の雑費計上も同様である。マニュアルでは雑費には規制がなく、Bは人件費が八パーセント規制にかからないよう指導するなどしており、本件店舗では契約書どおりではない運用の実態があった。

2  平成六年一一月の現金不足

現金不足とされる二三〇万円余りは使途不明金ではなく、そのほとんどが同年六月の開業以来八パーセント規制を超え未処理となっていた人件費である。被控訴人は同年一二月に人件費処理をした(その結果同月の人件費は二三五万余円で売上の一五・四九パーセントとなった。)が、同月には開業以来最高の売上があり現金不足は解消し一五四万円のプラスとなった。これら一連の経理処理は被控訴人が行ったものであるし、控訴人Y1 の三〇万円の盗難事実は二三〇万円余りの現金不足と関係ない。

3  平成六年一一月以降の立替金の計上

立替金は、Cレポートの月報(甲一九)によれば、平成六年一一月過戻し一〇〇万円、同年一二月過戻し五〇万円、平成七年一月立替金一五〇万円であって右三か月の立替金合計は〇円となり、これを八二〇万円とする根拠はない。また、貸借対照表(甲一六)によれば、平成六年一一月五〇万円、同年一二月〇円、平成七年一月一五〇万円で右三か月の立替金合計は二〇〇万円となり、これが正しいとしてもDへの貸付金一〇〇万円とカードラジオ代金八〇万円とほぼ一致するので、使途不明金が存するとはいえない。

4  自宅家賃の支出

控訴人Y1 はBの了解を得て店舗近くに仮眠場所として借りた部屋の家賃を経費として処理していたもので、正当である。

5  解除理由の不存在

控訴人Y1 は経理処理につき合理的な説明が可能で、被控訴人との信頼関係破壊はないから、本件契約の解除理由は存しない。

6  損害賠償金の有無

控訴人Y1 に債務不履行はない。また、本件店舗はオーナー変更後も営業していて被控訴人に損害はなく、約款三八条但書によるチャージ六か月分相当額一〇一五万一六八二円は著しく高額で明らかに社会的相当性を超えており認められるべきではない。

二  被控訴人の反論

控訴人らの補充主張はいずれも争う。

右主張は相互に矛盾していて従前の主張とも相違し、あるいは事実の根拠がなく法的にも意味がないものであって、全部失当である。

第三証拠関係

本件訴訟記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。

第四当裁判所の判断

当裁判所も被控訴人の請求は理由があると判断する。その理由は次のとおり付け加えるほかは原判決「事実及び理由」中の「第六 当裁判所の判断」記載のとおりである(ただし、原判決書三三頁一行目の「以降は、」の次に「Cが」を加え、同四七頁一行目の「B」を「B1」に改める。)から、これを引用する。

(控訴人らの補充主張に対する判断)

控訴人らの補充主張は以下のとおりいずれも採用できない。

1  平成六年八月以降の雑費、消耗品代の計上について

被控訴人は人件費が売上高の八パーセントを超えるときは控訴人Y1 に支払う月次引出金から控除することができるが(甲一)、人件費が雑費として計上されていれば右控除ができないから、これが被控訴人の不利益となることは明らかである。レンタカー代、携帯電話代を雑費や消耗品代として計上することも被控訴人の不利益になるもので、被控訴人やB1がこのような経理処理を許容していたと認めるべき証拠もない。

2  平成六年一一月の現金不足について

現金不足とされる二三〇万円余りのほとんどが人件費であることを認めるに足りる証拠はないし、平成六年一二月の控訴人Y1 の当月自己資本は前月に比して減少している(甲一八)のであって、現金不足が解消していたともいえない。なお、三〇万円の盗難事実は現金不足と関係ない旨の主張は控訴人Y1 の従前の主張と矛盾するものである。

3  平成六年一一月以降の立替金の計上について

Cレポート月報<証拠省略>、貸借対照表<証拠省略>及び弁論の全趣旨によると、右月報の立替金戻り額は被控訴人が控訴人Y1 の立替金に対しこれを戻す趣旨で送金したことを示すもので、右送金額は平成六年一一月一〇〇万円(控訴人Y1 の立替金五〇万円)、同年一二月五〇万円(同〇円)、平成七年一月〇円(同一五〇万円)であり、右月報の記載と貸借対照表の記載は符合していることが認められる。その余の控訴人らの主張は前提とする事実を認めるに足りる証拠がない。

4  自宅家賃の支出について

乙一及び控訴人Y1 の原審供述における家賃に関する部分は、控訴人Y1 の肩書住所地の自宅をいうのか本件店舗近くに仮眠場所として借りたという部屋の家賃をいうのかは判然としない(原審における控訴人らの主張も同様である。)。また、右供述等部分が仮眠場所に関するものであるとしても、八万九〇〇〇円の家賃を経費として処理することをB1ないし被控訴人が了解していたと認めるに足りる証拠はない。

5  解除理由の不存在について

以上の控訴人らの補充主張はいずれも採用できず、控訴人Y1 のした経理処理が合理的であったともいえないから、本件契約の解除理由が存することは明らかである。

6  損害賠償金の有無について

控訴人Y1 に債務不履行があることは前記(引用に係る原判決の記載を含む。)のとおりである。また、約款三八条但書は損害賠償額の予定を約定したものであるから、現実の損害額との対比等をいう控訴人らの主張は失当である。

第五結論

よって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六七条一項本文、六一条、六五条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 新村正人 裁判官 宮岡章 笠井勝彦)

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